新潟大学の化学は、3年連続で大問1が「理論・無機」です
まず事実から。令和5・6・7年度の3年間、新潟大学の化学は大問1に必ず理論・無機分野が配置されています。令和6年度は、6つの気体発生反応を並べて理論・無機の理解を横断的に問う構成でした。
| 設問の中身 | 問われた形式 |
|---|---|
| 6つの気体発生反応(銅と希硝酸、亜鉛と希硫酸、炭酸カルシウムと希塩酸、酸化マンガン(IV)と濃塩酸 など) | 反応をすべて把握したうえでの判定問題 |
| 金属元素の酸化数が変化しない反応の判定 | 酸化還元と酸塩基の区別(複数選択) |
| 水に溶かすと塩基性になる気体の特定とイオン反応式 | 気体の性質+電離平衡の式 |
| 酸化マンガン(IV)を触媒とした過酸化水素の分解 | 触媒の量を変えたときの生成量の変化を問う記述 |
酸化数の判定、イオンの式、触媒の定義——知識を覚えたかどうかではなく、その知識がなぜ成り立つのかを理解しているかどうかが問われています。
気体発生反応の定番パターンの整理(暗記だけでは対応できない理由)
気体発生反応は、高校化学のなかでもとくに「パターンを覚えれば解ける」と思われがちな単元です。しかし令和6年度の大問1は、まさにその思い込みを突いてきます。まずは定番パターンを整理します。
| 反応 | 発生する気体 | 反応の性質 |
|---|---|---|
| 銅 + 希硝酸 | 一酸化窒素 NO | 酸化還元反応(Cu:0→+2) |
| 亜鉛 + 希硫酸 | 水素 H₂ | 酸化還元反応(Zn:0→+2) |
| 炭酸カルシウム + 希塩酸 | 二酸化炭素 CO₂ | 酸塩基反応(Ca:+2のまま変化なし) |
| 酸化マンガン(IV) + 濃塩酸(加熱) | 塩素 Cl₂ | 酸化還元反応(Mn:+4→+2) |
| 塩化アンモニウム + 水酸化カルシウム(加熱) | アンモニア NH₃ | 酸塩基反応(Ca:+2のまま変化なし) |
| 酸化マンガン(IV)を触媒 + 過酸化水素 | 酸素 O₂ | 酸化還元反応だが触媒のMnは変化しない |
酸化数判定とイオン反応式の作り方
① 酸化数はどう判定するか
酸化数の判定でつまずく人の多くは、化合物ごとに酸化数を覚えようとしています。実際に必要なのは、次の3つのルールだけです。
| ルール | 内容 |
|---|---|
| ① 単体 | 原子の酸化数は0(例:Cu、H₂、Cl₂はすべて0) |
| ② 化合物中の酸素・水素 | 酸素は基本−2、水素は基本+1として、残りを逆算する |
| ③ イオン | イオン全体の酸化数の和は、そのイオンの電荷に等しい |
② イオン反応式はどう作るか
イオン反応式で失点する人の多くは、すべてを完全に電離させて書いてしまいます。しかし、弱酸・弱塩基は水溶液中で一部しか電離しません。
触媒の本質理解を問う設問を、実際に解いて見せます
この大問でもっとも差がつくのが、酸化マンガン(IV)を触媒に使った過酸化水素の分解に関する設問です。ここは知識の暗記ではなく、触媒という概念の本質を理解しているかどうかがそのまま点数に直結します。
「暗記で対応できる設問」と「原理理解が必要な設問」の見分け方
令和6年度の大問1を振り返ると、同じ「気体発生反応」というテーマの中に、暗記で解ける設問と原理理解が必要な設問が混在していました。この違いを見分けられるようになることが、無機化学の得点を安定させる近道です。
| 設問の種類 | 具体例 | 対応の仕方 |
|---|---|---|
| 暗記で対応できる設問 | 気体の色・臭い・捕集法/代表的な反応式を書く | 教科書・図表の内容をそのまま覚えれば得点できる |
| 原理理解が必要な設問 | 酸化数が変化しない反応を選ぶ | 反応ごとに酸化数を自分の手で計算し直す必要がある |
| 原理理解が必要な設問 | 塩基性の気体のイオン反応式 | 弱酸・弱塩基の電離平衡(⇌)を理解しているか |
| 原理理解が必要な設問 | 触媒の量と生成量の関係 | 触媒の定義の本質(速度と量は別物)を説明できるか |
化学でよくある失敗5つ
| やりがちな失敗 | なぜ失点するか |
|---|---|
| 「気体が発生する=酸化還元反応」と思い込む | 酸塩基反応でも気体は発生する。CaCO₃+HClはその典型例 |
| 触媒を「反応を速める物質」としか覚えていない | 量を変えたときに生成量まで変化すると誤答しやすい |
| 弱酸・弱塩基のイオン反応式を「→」で完全電離させて書く | 電離平衡(⇌)の理解が問われている設問で減点される |
| 酸化数のルールを金属だけに当てはめる | N・O・Sなど非金属元素の酸化数変化を見落とす |
| 反応式を覚えることをゴールにしてしまう | 反応式を書けても、酸化数や性質を問われると答えられない |
では、この力をどうやってつけるのか
なぜ、そう簡単ではないのか:反応式を覚えているだけでは、酸化還元か酸塩基かの判定はできません。1つの反応につき数十秒で酸化数を追える練習が必要です。
身につけるために要ること:実際に出た反応を使って酸化数を計算する練習。そして計算の過程が正しいかを確認してもらうこと。
なぜ、そう簡単ではないのか:弱酸・弱塩基は完全に電離しません。⇌で書くべき場面と→で書くべき場面を、自分で区別する必要があります。
身につけるために要ること:強弱の異なる酸・塩基を混ぜた演習と、書いた式の矢印が正しいかの確認。
なぜ、そう簡単ではないのか:触媒のように「知っているつもり」になりやすい用語ほど、量や条件を変えた設問で差がつきます。定義を丸暗記するだけでは対応できません。
身につけるために要ること:自分の説明を人に聞いてもらい、ズレを指摘してもらうこと。「なぜそうなるか」を言葉にする練習が欠かせません。
具体的に、何を・どの順番でやるか
| 段階 | やること | 目安 | ここで手を抜くと |
|---|---|---|---|
| STEP1 | 定番の気体発生反応をすべて反応式で書けるようにする | 高3の夏まで | そもそも判定の土台となる知識が抜ける |
| STEP2 | 反応ごとに酸化数を計算し、酸化還元か酸塩基かを分類する | 夏 | 反応式は書けても分類問題で崩れる |
| STEP3 | 弱酸・弱塩基のイオン反応式だけを集めて練習 | 夏〜秋 | 電離平衡の理解が抜けたまま本番へ |
| STEP4 | 用語の定義(触媒・平衡など)を自分の言葉で説明する練習 | 秋 | 定義を問う記述問題で言葉に詰まる |
| STEP5 | 過去問の大問1だけを集めて時間を計って演習 | 直前期 | 本番で見慣れない組み合わせに対応できない |
その先で必要なこと
| つけたい力 | 本当に必要なこと |
|---|---|
| 酸化数判定 | 反応ごとに計算した過程の確認(見落としは自分では気づきにくい) |
| イオン反応式 | 電離平衡の理解を踏まえた添削(⇌と→の使い分けの確認) |
| 定義の記述 | 自分の説明を聞いてもらうこと(本質を突けているかの判定) |
| 継続 | 毎週の確認テストと管理(無機化学は演習量がそのまま得点に直結する) |
参考書は書店で買えます。でも、あなたが計算した酸化数や書いたイオン反応式を見て「ここが違う」と教えてくれる人は、書店には売っていません。
よくある質問
Q. 新潟大学の化学は大問1がいつも理論・無機ですか?
A. 令和5・6・7年度の3年とも、大問1に理論・無機分野が配置されています。令和6年度は気体発生反応を題材に、酸化数判定や触媒の理解が横断的に問われました。
Q. 気体発生反応はどこまで覚えればいいですか?
A. 代表的な反応(銅と希硝酸、亜鉛と希硫酸、炭酸カルシウムと希塩酸、酸化マンガン(IV)と濃塩酸、アンモニアの発生など)は反応式を書けるようにしておく必要があります。ただし、覚えるだけでは酸化還元か酸塩基かの判定問題には対応できません。
Q. 酸化還元反応かどうかはどう見分ければいいですか?
A. 気体が発生するかどうかではなく、反応の前後で原子の酸化数が変化しているかどうかで判定します。単体(酸化数0)から化合物中のイオンに変わっていれば酸化還元です。
Q. イオン反応式はいつ⇌を使えばいいですか?
A. 弱酸・弱塩基のように、水溶液中で一部しか電離しない物質が関わるときに⇌(平衡)を使います。アンモニアはその代表例です。
Q. 触媒の量を変えると生成量も変わりますか?
A. 変わりません。触媒は反応の前後で自身が変化せず、反応速度を変えるだけの物質です。生成量は反応物の物質量で決まるため、触媒の量には左右されません。
Q. 触媒の量を半分にすると何が変わるのですか?
A. 発生する気体の量は変わりませんが、反応が完了するまでの時間は長くなります。触媒は速さに作用し、量には作用しないためです。
Q. 無機化学はどう練習すればいいですか?
A. 反応式の暗記→酸化数の判定→イオン反応式→定義の記述説明、の順で練習し、最後に自分の計算や説明を第三者に見てもらう流れが効果的です。見落としや理解不足は自分では気づけないためです。
Q. 化学全体で他にどんな分野が出ますか?
A. 令和6年度は大問1の理論・無機に加えて、有機分野も横断的に出題されています。理論・無機・有機のいずれも手を抜かない対策が必要です。
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